一万字OKR実践マニュアル
「Objectives and Key Results」(OKR)
- 企業・チーム・個人が協働して目標を設定するための方法です。OKRは万能薬ではありません。正しい判断、強いリーダーシップ、創造的な文化を置き換えることはできません。しかしこれらの基盤が整っていれば、OKRは人とチームを高みに導きます。
- OKRは、組織全体の力を、全員にとって同じように重要な仕事へ集中的に向けるマネジメントシステムです。
- OKRは柔軟かつデータドリブンな手法であり、オープンでデータを重視する組織に適しています。
- OKRは会社の最重要目標を体現し、社員を協働へと導き、バラバラの取り組みをつなげ、組織に明確さと一体感を与えます。
- OKRは「創業者の“もっと大きく考えよう”という姿勢を制度化するシンプルな道具」です。
- 健全なOKR文化は、絶対的な誠実さ、私利の放棄、チームへの忠誠というグローブの思想を土台にしています。
- 私たちは最終的に一定の目標を達成します。その達成度を測る指標がキーリザルトです。
- OKRのサイクルでは、いつでも既存の設定を調整・破棄できます。正しいキーリザルトが仕事の数週間後、数か月後に姿を見せることもあります。OKRは進行中の仕事そのものであり、固定化されたものではありません。
- これこそがOKRの生命力です。バラバラな部門を密接につなぎ、構造化・可視化された目標設定システムが境界線を消してくれます。
- OKRの価値は疑いようがありません。リーダーの真意に組織全体の努力を一致させ、全社員が自分の貢献を見つけられるようにしてくれるからです。
目標
- 大胆で難易度の高い目標を追い求める前に、問題の本質を掴むことがすべての前提であると理解しましょう。
- 目標は進むべき方向を示します。
- 目標とは「達成したいこと」です。誇張も矮小化も不要です。本質的に重要で、具体的で、行動志向で、鼓舞するものであるべきです。優れた設計と実行によって、思考と行動の曖昧さを防ぎます。
- エドウィン・ロックは、第一に「難しい目標」は簡単な目標より高いパフォーマンスを引き出し、第二に、具体的で難しい目標は曖昧な目標より高い成果を生み出すと指摘しています。
- 重要度を測る際は「今後3か月(または6か月、12か月)で最も大切なことは何か?」を自問してください。成功する組織は、実質的な変化をもたらす少数の施策に集中し、緊急度の低いものは後回しにします。
- 自分の限界を認識して受け入れられない限り、目標は達成できません。「すべてをやることはできない。選択しなければならない」のです。
- OKR成功の鍵は「信念」と「経営陣のコミットメント」です。トップにも自分の目標が必要です。
- 最上位の目標は本当に重要でなければなりません。OKRは「全部やりたいことリスト」でも日常タスクの寄せ集めでもありません。今この瞬間に進歩を生むべく厳選された目標群であり、同時に私たちが望む大きなゴールと連動しています。グローブは「マネジメントの技術とは、一見同じくらい重要に見える選択肢の中から最大のレバレッジを持つ1つか2つ、場合によっては3つの活動を選び、集中することだ」と書いています。
- 目標設定はアートであり単なる主観ではありません。あるキーリザルトを一時的に最優先に引き上げるなら、率直に伝える方がよいのです。「いま最優先はこれだ。特別な注意が不要になれば通常のキーリザルトに戻す」と説明しましょう。現実に合わせてダイナミックに調整する必要があります。
- 目標設定の精度を下げる要因は2つあります。自分の良いアイデアを手放したがらないことと、必要な時間を慢性的に過小評価することです。
- 決定的な要素を掴み、重要なことを先にやりましょう。さもなければ永遠に着手できないかもしれません。
キーリザルト
- キーリザルトは測定でき、目に見え、達成可否がはっきりしていなければなりません。「できたかどうか?」の白黒が明確であること。
- キーリザルトは、目標達成に向けてどう進んでいるかをチェックする物差しです。具体的で、期限があり、チャレンジングで、それでいて実現可能である必要があります。何よりも測定と検証が可能でなければなりません。マリッサ・メイヤーの言葉を借りれば、「数字が入っていなければキーリザルトではない」のです。基準を満たすか否か、曖昧さは許されません。
- キーリザルトは、目標を現実化するレバーであり、プロセス上のマイルストーンです。適切に設計された目標であれば、3~5件のキーリザルトで十分です。
- すべてのキーリザルトをやり切って初めて、目標が達成されます。目標が実現できなかったなら、それはOKRではありません。
サイクル
- 目標設定の標準サイクルは四半期です。
- OKRは日次のモニタリングを要求しませんが、定期的なチェックが不可欠です。できれば毎週のレビューが望ましく、パフォーマンスの低下を防ぎます。
- ベストな結果を得るには、上司と部下が四半期内に複数回しっかりとレビューを実施し、進捗を共有し、障害を特定し、キーリザルトを見直します。
- OKRは仕事が終わったらそれで終わり、ではありません。データドリブンなシステムでは、振り返りと分析が大きな価値を生みます。1on1でもチームミーティングでも、振り返りは客観的評価・主観的自己評価・リフレクションの3部構成で行います。
OKR成功の鍵
- 信念とトップの支援。経営陣が自らの目標を宗教のように信じなければ、OKRは機能しません。
- OKRは既存の秩序を揺さぶります。だからこそ、その秩序に意図的に組み込む必要があります。
- OKRには専任の仕組みと、全体を掌握するリーダー、スコアリングとレビューを追跡するサポート役が必要です。
- 会社の目標を明確にし、それが個人の目標とどう連動するかを示すこと。「目標と期待」の議論で触れたように、これこそがOKRです。
- マネージャーとリーダーのために適切なトレーニングと投資を行いましょう。人を研修に送り出すのではなく、1時間のオンラインセッションでロールプレイを交えながら学ぶ方が身につきます。
OKR導入の難しさ
- OKRの実践には、厳密さ、コミットメント、クリアな思考、積極的なコミュニケーションが求められます。単にリストを作って二度チェックすることではなく、能力を鍛えながら目標を定める営みです。痛みなくして得るものはありません。
効果的なOKRを設計する
- OKRは実効性がなければ意味がありません。達成不可能、あるいは自分たちでコントロールできないOKRは時間の無駄であり、形だけのマネジメントに過ぎません。
- 効果的なOKRを設計するのは難しく、次の基本ルールを守る必要があります。
まず「目標」は“何を”達成するかを定義します。意図を明確にしましょう。
- 野心的でありつつ、現実を見据えること。
- 目標は具体的で、客観的で、はっきりしていなければなりません。
- 理性的な観察者が見れば達成したかどうかが明白であること。
- 目標達成がGoogleに明確な価値をもたらすこと。
次に「キーリザルト」は“どうやって”を意味します。
- 目標を効率的に進める測定可能なマイルストーンを設定すること。
- 行動ではなく成果を記述すること。「支援する」「分析する」「参加する」といった言葉は活動を示します。代わりに、エンドユーザーにとっての影響を表現しましょう。例:「3月7日までにColossusの6つのストレージセルの平均遅延とテール遅延を公開する」は、「遅延を評価する」より優れています。
- 完全な証拠を含めること。証拠はアクセス可能で、信頼でき、容易に確認できる必要があります(変更リスト、ドキュメントのリンク、メモ、公開された測定レポートなど)。
OKRの4つの「武器」
集中とコミットメント
- 優先事項への集中とコミットメント。高業績の組織は重要な仕事にフォーカスし、重要でないことを見極められます。リーダーが難しい選択を迫られるとき、OKRは決断を促します。部門、チーム、個人にとってOKRは、混乱を取り除き、成功の鍵に集中させる精密なコミュニケーションツールです。
- ラリー・ペイジの言葉を借りれば、成功する組織とは「既存のリソースを最大限に活かし、一流のプロダクトづくりに集中する」組織です。言い換えれば、シンプルさと集中こそがこの「武器」の核心です。
- 一度にうまくできる大仕事はひとつ。だから自分たちが取り組むべき最重要事項を知らなければなりません。
- OKRは「集中」を最大の価値として提供するべきです。目標が少ないときにこそ、本当に集中できます。コミットメントをするたびに他の選択肢は閉ざされます。これは有限のリソース配分における宿命です。したがって計画を立てる人には勇気、誠実さ、規律が求められます。プロジェクトをやめて新しいものに着手する覚悟が必要です。「ノー」と言うことは、「イエス」と笑顔で言うことと同じくらい重要です。すべてに注意を払うことは、何も注意していないのと同じであると自覚し、それを実践しましょう。
- 一つのサイクルでOKRは3~5件あれば十分です。会社・チーム・個人の最重要事項を示せます。通常、1つの目標に紐づくキーリザルトは5件以下にすべきです。
- 重要度を判断する際は、「次の3か月(6か月、12か月)でもっとも重要なのは何か?」と考えましょう。成功する組織は、実質的な差を生む少数の取り組みに集中し、緊急ではないものは後回しにします。経営陣はその選択を言葉と行動で支持し、最上位のOKRを守り、チームに方向と評価軸を提供します。結果が見え始めたら、間違った決断もタイムリーに修正できます。曖昧な態度や性急な撤退は無価値です。これからの優先順位は何か?人々はどこに注力すべきか?有効な目標設定は、トップの丁寧な思考から始まります。リーダーは重要事項の選定に時間とエネルギーを投資すべきです。
- どんなトップ目標を選ぶにしても、リーダー自身も目標を持たねばなりません。言葉と行動で公にコミットしてこそ、OKRは難局を乗り越えられます。
- CEOや創業者であれば、「これが私たちの取り組むことだ」と宣言し、率先垂範で示す必要があります。リーダーシップの行動なしに目標を本気で気にする人はいません。
- OKRを導入する際、マネージャーは公開の場で目標を表明し、ぶれずに実行する必要があります。真のコミットメントを生むには、リーダーが身をもって示さねばなりません。
- マネジメントは自分たちのOKRを揺るぎなく追い続け、他のメンバーの達成もサポートすべきです。
- 良質な意思決定、チームスピリット、卓越した成果を維持するには、組織のトップ目標を全員が明確に理解していなければなりません。しかし3社に2社は、トップ目標を一貫して伝えられていないと認めています。リーダーは、なぜ・どのように取り組むのかを語る必要があります。人々はマイルストーンの成功でモチベーションを得るだけでなく、自分の仕事の意味や目標と会社ミッションとの関連を知りたいのです。四半期に一度の全社会議でOKRを発表して終わりではありません。LinkedIn CEOのジェフ・ウィナーがよく言うように、「自分で話すのに飽きた頃に、ようやく人は耳を傾け始める」のです。
- 経営陣がOKRを受け入れても、油断は禁物です。チームリーダーとして、繰り返しメンバーに思い出させるのは私の役目でした。メールで個人OKRの作成を依頼し、返信がなければチャットで催促し、それでも反応がなければテキストメッセージを送り、最終的に直接会って「OKRをつくってください」と伝えました。
- 目標設定は短期OKRと年間OKRを並行させるのがベストな場合が多いです。短期目標が実務を前進させ、年間計画は現実に合わせて策定し、実行可能であることが求められます。
- 締め切りほど人を動かすものはありません。3か月というタイムボックスは、先送りを防ぎ、実際の成果を生み出します。
- 対応するキーリザルトでは、仕事の品質も強調するべきです。たとえば支払処理なら、処理した伝票件数に加えて、監査やサプライヤーが見つけたエラー件数を組み合わせる必要があります。清掃チームであれば、担当する清掃面積と、施設を利用する経営陣の評価をセットで見るべきです。
- OKRサイクルのどの段階でも、設定を修正したり、完全に捨てたりできます。
連携と結びつき
- チームワークの連携と結びつき。OKRは透明です。CEOから個々のメンバーまで、誰の目標もオープンです。各自が自分の目標と会社計画を結びつけ、依存関係を明確にし、他チームと協力します。このトップダウンの連携によって、個々の貢献が組織の成功と結びつき、仕事に意味が生まれます。ボトムアップのOKRは、主体性と参加、イノベーションを促します。
- メンバーの参加を促すには、チームや個人がマネージャーと対話しながら目標を調整するよう奨励しましょう。そのような協働で決めたOKRが全体の半分ほどを占めるのが理想です。目標のすべてがトップダウンなら、モチベーションは下がります。
- OKRは、協働で優先順位を定め、進捗をどう測るかを決めるためのものです。会社の目標が決まっていても、キーリザルトは話し合いと調整が可能です。全体の合意と同期が成功に不可欠です。
- トップの目標が定まった瞬間から、本格的な仕事が始まります。計画から実行に移る際、マネージャーとメンバーは日々の仕事を組織のビジョンと結びつけなければなりません。この結びつき、すなわち「アラインメント」の価値は計り知れません。ハーバード・ビジネス・レビューの調査では、高いアラインメントを持つ企業は、そうでない企業に比べ、トップパフォーマーになる確率が2倍になることが示されています。
- しかしアラインメントは稀です。わずか7%の社員しか、自社の戦略と自分に求められていることを完全には理解していないという調査があります。世界のCEOを対象にした調査でも、戦略と実行の間の最大の障壁は、アラインメントの欠如でした。
- 適度な階層化や連動があれば組織運営は整合しますが、あらゆる目標を組織階層に沿って機械的に結びつけると、数字合わせに堕し、次の4つの弊害を生む恐れがあります。
- 垂直一方向の仕組みでは、現場の努力が見えにくいのです。トップダウンのエコシステムでは、社員は目標に関する課題や有望なアイデアを共有しづらくなります。
- ある目標がより大きな目標を支援する場合、階層を飛び越えても構いません。CEOレベルの目標から直接マネージャーへ、部長から直接メンバーへ渡っても良いのです。
- アンディ・グローブは「最前線で戦う人こそ、変化をいち早く察知する。営業は顧客の要求変化をマネージャーより早く察し、金融アナリストはビジネスの変化を最初に掴む」と述べています。
- 理想的なOKRシステムでは、社員が目標の一部やキーリザルトの多く(あるいはすべて)を自ら設定できます。OKRはメンバーに、より高く遠くを目指し、より大きな成果を追求するよう促します。「目標が高いほどパフォーマンスも高くなる」のです。行き先が分かる人は、そこへの道筋も見出せます。
- 優位性を築くには、リーダーも社員も横断的につながり、障壁を取り除く必要があります。
- 連携とは、人に「何をしてほしいか」を伝える道筋をつくることです。
- 内部の目標を揃えるだけでなく、「北極星」(もっとも大切な価値観)に対して目標の正しさを保つことでもあります。
- 現場の社員が自分の仕事と会社全体の目標との関係を理解すれば、主体性は自然と高まります。
責任とフォローアップ
- 責任追跡:OKRはデータに根ざします。定期的なチェック、スコアリング、継続的な見直しがOKRに生命を吹き込みます。危険なキーリザルトは、軌道修正や必要な変更を引き起こします。
- 研究によると、定量的に測れる進歩は、他者からの称賛や金銭的インセンティブ、ゴール達成そのものよりも強い動機づけになります。
- 環境が変化し、設定した目標が非現実的になったときは、実行中でもキーリザルトを調整・削除してください。
- それでも私たちはOKRの価値観「透明性と説明責任」を守り続けます。
- 共有した目標が誰の目にも触れないなら、そのシステムを透明と呼べるでしょうか?
- 自分の仕事が会社の成功にどう貢献しているかを実感したとき、人は最もエンゲージします。
- 毎朝ワクワクできる目標とキーリザルトを思いつけないなら、どこかが間違っています。
- 彼(テレサ・アマビル)は「個人の最大のモチベーションは『仕事が前進している』という実感だ」と言います。人は進歩を感じたときに最も前向きで没頭できます。
- OKRは日次トラッキングを要求しませんが、定期的なチェックが必要です。週に一度のレビューがベストで、パフォーマンス低下を防ぐ必須条件です。
- ピーター・ドラッカーも「行動計画がなければ、マネジャーは出来事の虜になる。事業が発展するにつれ、チェックポイントを設けなければ、何が本当に重要で何が単なる雑音か分からなくなる」と述べています。
- OKRを追跡して継続的なフィードバックを得れば、目標管理において好不調の波は抑えられます。
- キーリザルトや目標が時代遅れになったら、即座に終止符を打ちましょう。古い予測に固執する必要はありません。リストから削除し、前に進むのです。目標は目的のためにあるのであって、目標のための目的ではありません。
- OKRの評価期間が終わる前に目標を削除する場合は、関係者全員に知らせることが重要です。そして内省しましょう。「今期の最初に予見できなかったことは何か?その教訓は?」
- OKRは仕事が完了しても失効しません。データドリブンなシステムでは、振り返りと分析が大きな価値を生みます。1on1でもチーム会議でも、振り返りは客観評価、主観的自己評価、リフレクションの3要素で構成されます。
- 数字が芳しくないからといって、チームの努力不足とは限りません。きれいな数字の裏に人為的な操作が潜むこともあります。
- 自己評価の傾向は人によって異なります。自分に厳しい人もいれば、甘い人もいる。どちらの場合も、気配りの効くファシリテーターやリーダーが介入して再調整を助ける必要があります。最終的には、単なる数字よりも状況に根ざしたフィードバックや広範なディスカッションが重要です。
- リフレクション:満足のいく結果にたどり着くには、野心的な目標を掲げ、その大部分を達成し、一度立ち止まって成果を振り返り、このプロセスを繰り返すことです。ジョン・デューイは「人は経験そのものから学ぶのではなく、経験について考えることで学ぶ」と語りました。
OKRサイクルの締めくくりに使える問い
- すべての目標を達成できたか?
- 達成できたなら、成功の要因は何か?
- 達成できなかったなら、障害は何か?
- もし目標を書き直すなら、何を変えるか?
- 次のサイクルのOKRをより良くするために、どんな学びがあったか?
- 可能ならチームで祝おう。OKRの力を得ている証だからです。
- ミッションは方向性を示し、目標は具体的なステップです。実際に関わり、努力し続けることが求められます。
- OKRは野心と規律を両立させます。測定可能なキーリザルトが進捗停滞や目標の非現実性を示したら、資源を再配分しましょう。
- ときには間違ったものを測っていることもあります。責任を果たそうと努力していてもです。
不可能への挑戦
- 限界を押し広げ、不可能に挑む:OKRは、これまで描いていた可能性を超え、想像すらしていなかった領域へ引き上げてくれます。限界に挑み、失敗を許容することで、私たちの創造性と野心はもっとも引き出されます。
- アンディ・グローブは「誰もが容易にこなせる目標よりも高めに設定すれば、結果はよくなる。自分と部下のベストを引き出したいなら、目標の立て方が決定的に重要だ」と書いています。オペレーショナルな目標は完遂が求められますが、インスピレーションを与えるOKRはプレッシャーを感じるほど高くあるべきです。彼が名付けた「挑戦的(stretch)な目標」は、組織を新たな高みに押し上げます。
- 企業が長期的に成長し続けるには、限界を破り、高みを目指す信念が不可欠です。
- ビル・キャンベルは「継続的にイノベーションできない会社は滅びる。繰り返しではなくイノベーションだ」と述べています。慎重な目標設定はイノベーションを妨げます。イノベーションは酸素です。なければ呼吸も勝利も望めません。
- ジム・コリンズは『ビジョナリー・カンパニー』で「BHAG(大胆不敵な大目標)」を掲げ、火種が大火になると信じるべきだと述べました。1960年代のNASAの月面着陸計画は誘惑的で極めて挑戦的な目標であり、人々の想像力と潜在力をかき立てました。
- 目標が挑戦的であればあるほど、得られる成果は良くなります。難易度が高い目標と成果のギャップは、易しい目標の場合より大きくなりがちですが、それでも最終的に得られる成果は後者を上回ります。
- 起業家とは、可能性を考えるだけでなく実行に移す人たちです。スコープや規模の面でも挑戦的な目標を設定すべきです。スタートアップも先行企業も同じです。挑戦的な目標はアントレプレナーシップを醸成し、思考の枠を打ち破り、事業をより良いものにします。
- 大きな目標の達成には、OKRが生み出す力に依存します。集中とコミットメントこそが、差別化をもたらす結果につながります。
GoogleはOKRを2つのカテゴリーに分けています。コミット型とビジョン型(挑戦型)です。両者は本質的に異なります。
- コミット型目標は、プロダクトリリース、予約、採用、顧客など日常の指標と密接に関係しています。会社レベルではマネジメントが、部署レベルでは社員が目標を設定します。これらの目標(売上目標など)は期間内に100%達成することが求められます。
- 挑戦型目標は、より大きな構想や将来志向を反映し、高いリスクを伴います。どのレベルからでも生まれ、組織全体のエネルギーを喚起します。平均40%は未達に終わりますが、それでもGoogleのOKRを構成する重要な一部です。
- 2つのバスケットの重みづけは文化によって異なります。異なる組織、同じ組織でも四半期ごとにバランスは変わります。リーダーは考えなければなりません。「これから1年、自分たちはどのような会社になりたいのか?新市場を果敢に開拓するのか、それとも既存の地位を堅実に守るのか?サバイバル第一で保守的に投資するのか、高リターンを狙ってリスクを取るのか?いま事業が求めているのは何か?」
- リーダーが自分と部下の最高の結果を望むなら、挑戦的な目標を設定することが不可欠です。
- ラリー・ペイジは「多くの人々は“できない”と決めつけてしまい、実現の可能性を探ろうとしない。クレイジーで挑戦的な目標を掲げれば、たとえ達成できなくても、相当な成果を得られる。10%の改善では、他人と同じことをしているだけで終わってしまう。失敗はしないかもしれないが、成功も大きくない」と語っています。だからこそGoogleは競合より10倍優れたプロダクトやサービスを目指すのです。効率向上や小さな技術改善による適度な成長では満足できません。「10倍の改善」を実現するには、問題を捉え直し、技術的可能性を探り、その過程を楽しむ必要があります。
- 高い負荷とリスクを伴う目標を追うとき、社員の確信は欠かせません。リーダーは「結果の重要性」と「達成できるという確信」の2点を伝える必要があります。
- わたしたちの仕事では、自分たちが不安になるほどの挑戦的な目標を掲げ、その達成が求められます。短い祝杯の後、また次の非常に難しい目標を設定し、再び挑戦します。こうした挑戦を達成するご褒美のひとつは、昇進や成長のチャンスを得られることです。
- 最高の人材が集まるチームでは、十分に考え抜いた慎重な答えが求められます。1人だけでは成功できません。
- 挑戦的な目標が達成可能だと人々が信じなければ、本当に達成できません。これが目標設定のアートです。
- 何を優先し、どこに資源を割り当てるかを決めるときは、常に「何もしなければ、この壮大な目標には到達しない」ことを忘れないでください。
- 挑戦的な目標は、組織全体に再設計を迫ることがあります。
- 人が自分の方向性や成果を測るための物差しが必要です。私たちの仕事は、その正しい物差しを見つけることです。
OKRの親戚――CFR
- OKRとCFRは互いを補完し合います。OKRと同じくCFRも、組織のすべてのレベルで透明性・説明責任・エンパワーメント・チームワークを重視します。CFRは効果的なコミュニケーションの触媒であり、OKRを活性化し軌道に乗せる存在です。何が重要かを測定するための完全なデリバリーシステムであり、アンディ・グローブの革新的アプローチが持つパワーをより人間的に発揮させます。
- OKRが目標の「筋肉」だとすれば、CFRはその筋肉を柔軟で反応の良いものにする役割です。「パルス型」のチェックが、組織の健康状態(フィジカル、メンタル、働き方、文化)をリアルタイムに把握させてくれます。
会話(Conversation)・フィードバック(Feedback)・認知(Recognition)
会話:マネージャーと従業員の間で行われる、本音で質の高い対話。パフォーマンス向上の原動力になります。
- 1on1の鍵は、部下が主導するミーティングだと捉えることです。話題も進め方も部下が決め、上司は傾聴し、コーチングします。
- 否定的な指摘ではなく、未来の改善にフォーカスするのがコーチングです。
会話は通常、次の5つの領域で行われます。
- 目標設定とリフレクション:個人のOKRプランを次のサイクルに向けて作成し、組織の最優先課題とどう組み合わせるかを議論します。
- 継続的な進捗アップデート:データに基づき、仕事の進み具合をリアルタイムで把握し、問題があれば迅速に解決します。
- 双方向のコーチング:従業員の潜在能力を開発すると同時に、マネージャー自身も成長します。
- キャリア開発:スキル向上、成長機会の発見、社内でのキャリアパスの提示。
- ライトウェイトのパフォーマンスレビュー:前回以降の組織側の投資と、従業員側のアウトプットを簡潔に振り返る仕組みです。
フィードバック:同僚同士が行う双方向のコミュニケーション(対面またはオンライン)。進捗を評価し、改善の方向性を探ります。
- フィードバックは観察と経験に基づく意見であり、自分が他者に与えている印象を理解する手助けとなります。
- 現代の従業員は、管理されるよりも「権限移譲」と「モチベーション」を求めます。1年間懸命に働いたあとに評価が返るのではなく、自分の目標や計画を定期的に共有し、他者の進捗も把握したいのです。
- チーム同士のつながりを育むことで、双方向のフィードバックは職能横断の活動で大きな価値を発揮します。水平的コミュニケーションが新しい常識になりつつあります。OKRと360度フィードバックを組み合わせれば、従来の年次評価はすぐに過去のものになります。
フィードバックは具体的であるほど建設的です。
- ネガティブな例:「先週の会議を遅らせたことで混乱が起きた」
- ポジティブな例:「プレゼンが素晴らしかった!最初に聴衆の心を掴み、私が好きな“次に取るべきステップ”で締めくくっていたね」
認知(Recognition):個人の貢献度に応じた表彰・称賛。
- サービス業において最も価値があるのは、自信を持ち、自分が価値を生み出せると信じ、長期的に会社にとどまりたいと考える従業員です。
- 認知はCFRのなかでもっとも過小評価され、理解されにくい要素です。
- 現代の認知はパフォーマンスと横の比較に基づく「認知のクラウドソーシング」に近い形です。誰もがいつでも他人の成果を称賛でき、その逆も可能です。
- ジェットブルー航空は、価値観に基づいた双方向の認知システムを設計し、リーダーが現場の従業員に目を向けるようになり、従業員満足度が倍増しました。
認知を高めるためのヒント
- 同僚同士で称賛し合う文化を育てる。成果が仲間の目で認められると、感謝の文化が芽生えます。Zume Pizzaでは毎週金曜日に全員で「レトロスペクティブ」を行い、最後に卓越した貢献をした人へ心から称賛を送ります。
- 明確な基準を設定する。社員が行っているのは行動か結果かを見極め、特別プロジェクトの達成なのか、会社目標の達成なのか、バリューの体現なのかを判断します。「今月のベスト従業員」より「今月の成果」といった表現に置き換えると良いでしょう。
- 認知につながるストーリーを共有する。リアルタイムのコミュニケーションツールや社内ブログで、成果の裏側にあるストーリーを伝え、認知に意味を持たせます。
- 認知の頻度とアクセス性を高める。小さな成果でも称賛します。締め切り前の頑張り、提案書の磨き込み、リーダーが当たり前だと感じている小さな仕事なども対象です。
- 会社の目標や戦略に沿った認知を行う。カスタマーサービス、イノベーション、チームワーク、コスト削減など、組織の最大利益につながる貢献があれば積極的に取り上げましょう。
- OKRプラットフォームは双方向の認知を実現するために存在します。フィードバックが良好で認知が盛んな領域では、四半期ごとの目標が絶えず設定され、作り直されています。OKRの透明性により、大きな成功も小さな勝利も、仲間から心からの祝福を受けられます。一人ひとりの成果は注目され、称えられるべきです。このやり取りが定着すれば、多くの人が巻き込まれ、認知の文化が会社全体を活性化させます。
- 会話は個人の思考を変え、行動を変え、最終的には組織文化を変えます。
- アインシュタインは「数えられるものがすべて価値を持つわけではなく、価値あるものすべてが数えられるわけでもない」と述べました。
- 年次評価をやめ、継続的なコミュニケーションとリアルタイムフィードバックに置き換える、あるいは少なくとも加えることで、一年を通じて改善し続ける可能性が高まります。
継続的改善
- 直感に頼るのをやめ、立ち止まり、雑念を払ってください。目を閉じて状況を把握し、組織のニーズに最適な方向を選びます。OKRの巧妙さは、リフレクションを仕様化している点にあります。
- あらゆるプロセスには試行錯誤が必要です。アンディ・グローブは「IntelがOKRを取り入れたとき、多くの失敗をした」と語りました。「当初はOKRの本質的な目的を完全には理解していなかったが、時間とともに使いこなせるようになった」。組織がこのシステムに慣れるには4~5四半期かかり、成熟した目標を組み立てるにはさらに時間を要します。
- OKRは初回で完璧にはできません。2回目、3回目でも同じです。それでも諦めず、改善を続け、自分たちに合った形を見つけましょう。
- OKRの設定と運用を重ねるごとに、私たちは少しずつ前進します。目標は精度を増し、キーリザルトは測定しやすくなり、成功確率も高まります。特にプロダクトのように幅広い目標では、コツを掴むまでに2~3四半期かかりました。未知の市場を予測するのは難しく、過剰に達成したり、大きく外してしまったりします。そこでOKRを調整し、収益や想定ユーザー数ではなく、期限ベースのキーリザルトに切り替えました。例えば「2015年5月1日までにダイエットアプリProDietのアップデートをリリースする」といった具合です。プロダクトをリリースして実データが得られれば、影響をより正確に測定できます。
- IT部門が新しい環境や課題に順応できるよう、アディックスはまず直属のマネージャー層にOKRを導入しました。四半期後にはスーパーバイザー層へ、さらにその四半期後にはIT部門の社員600名全員へ拡大しました。Intuitの事例は、全社展開の前にパイロットを実施する意義を示しています。
文化の重要性
- 今日のマネジメントでは、誰もが“次に正しい一歩をどう踏み出すか”を知る必要があります。ルールブックが何をしてよくて何をしてはいけないかを教えてくれるとしても、本当に求められるのは“正しいことをしたくなる文化・価値観”です。
- 現場社員にとって、OKRは仕事のアウトプットのすべてですが、マネージャーには日常的なマネジメント責任もあります。もし私の目標が美しいバラ園を育てることなら、「芝生を常に青く保つ」ことも当然必要です。「社内を巡回して士気を保つ」といったことをキーリザルトとして書くことはありません。特に強調すべき事項は書き留め、常に意識します。
- OKRシステムでは、最前線の社員であっても全員の目標が見えるようになります。フロントラインからCEOまで、誰もが目標に対するオープンな批評や修正に参加できます。目標設定プロセスそのものに潜む欠陥についても、社員が堂々と議論できます。陽の当たる場所でメリトクラシーが成長します。「これが私のやっていることだ」と書けば、素晴らしいアイデアがどこから生まれているかがわかります。最速で昇進する人は、会社にとって最も重要な仕事に集中している人です。疑心暗鬼、責任転嫁、政治的な駆け引きといった組織の毒も、OKRの枠組みではその毒性を失います。
- 文化は、個人と組織を一致させる共通言語です。みなが同じテーマについて話し、それが価値あるものになるようにするためのツールです。
- ジェフ・ベゾスは「どんなに小さなものでもイノベーションを奨励する文化が必要だ」と述べています。
- リーダーは企業文化の構築に熱心であり、創業者は「会社が成長しても文化価値をどう守るか」と常に問いかけています。多くの大企業のCEOが、OKRとCFRを文化変革のツールだと捉え始めています。
- CEOとして、グローブは自らをIntel文化価値の最高責任者だと位置づけていました。文化とは価値観と信念が発現した集合体であり、会社での行動規範です。会社が成功する源泉は、前向きで力強い文化を作り上げることにあります。
- 文化価値に忠実な社員は、どんな状況でも一貫した行動を取ります。だからこそ、マネージャーは管理をルールや手続きに頼らずにすみます。マネジメントの仕事は、共通の価値観と目標、信頼の手法を育てることです。方法は言葉で伝えること、文書にすること、そして何より模範を示すことです。グローブは自分自身を、Intel文化価値を体現する最高の代弁者だと考えていました。
Googleは社内180チームのパフォーマンスを調査し、以下の5つの問いが密接に関わっていると発見しました。
- 構造と明確さ:チームの目標・役割・計画は明確か?
- 心理的安全性:このチームでリスクを取ることに安心感があるか?
- 仕事の意味:自分にとって意義のあることをしているか?
- 信頼性:互いに信頼し、高品質な仕事を期限内にやり遂げられるか?
- 仕事の影響:自分たちの仕事が本当に意味のあるものだと信じられるか? 1つ目の「構造と明確さ」は目標とキーリザルトに直接影響します。その他の問いも健全な文化を築くうえで欠かせず、OKRの力を引き出し、CFRを効果的に活用するためにも重要です。依存関係のある仕事を行う環境では、透明性と一貫性が社員に責任を果たさせる後押しになります。Googleでは、チームがプロジェクトの成功・失敗を共同で担う一方で、各自が特定の成果に責任を負います。最高のパフォーマンスは、緊密な協働とプロダクトへの強いオーナーシップから生まれます。
- エンパワーされた企業は、競合をアウトパフォームします。
- 透明性の高い文化では、人々は開かれ、真実を共有し、他者を受け入れ、機敏に動けます。OKR/CFRが推進する文化こそ、この透明な文化です。
- 文化を変えるには、組織にとって適切な人材を見極め、不適合な人には去ってもらい、適材適所を実現しなければなりません。多くの場合、人は自身の目標と望む成果をどう結びつければよいかわからず、「見せかけの仕事」が多くなります。
- 文化はフィルターの役割を果たします。どんな人材を採用し、どんな価値観を持つ人を抜擢するかを決定します。
OKRの意義
- 多くの人がOKRをツール、解決策、運用プロセスとみなしますが、私は離陸のための発射台だと捉えています。創業者にとっても大企業のリーダーにとっても、OKRはビジネスを飛躍させる力になります。
- アイデアを持つことは簡単です。課題は実行です。実行がなければすべてが絵に描いたモチです。
- OKRは、目の前の仕事を超えてビジネス全体を俯瞰する視点を与えてくれます。
- OKRは問いかけます。「あなたは何に情熱を感じるのか? その情熱によって何を実現したいのか?」
- OKRは情熱を保ちながら、考え方と行動のフレームワークを提供してくれます。枠組みがなければ、思考は抽象的すぎるものになってしまいます。
- スタートアップにとってOKRは生存ツールです。特にテクノロジー業界では、資金が尽きる前に続く資金調達を得るために素早く成長しなければなりません。
- 使命が困難であればあるほど、OKRの重要度は上がります。
- 通常、スタートアップは市場ポジションが曖昧です。Nuna Healthは規模拡大の過程で、自社保険を提供する企業向けサービスから、巨大なメディケイドデータベースの構築、さらには新しい保険プログラム開発へとシフトしました。私たちはこれまで以上にOKRに頼るようになりました。チーム全員が明確な集中と優先順位を必要としており、それがコミットメントを深める前提条件でした。OKRがあったからこそ、本来であればあり得なかった対話が生まれ、方向性が揃いました。毎四半期、私たちは反応的ではなく意図的な計画を立て、期限は厳しく、コミットを達成できるという感覚も得られました。
- 多くのスタートアップリーダーは、構造化された目標など不要だと考えます。「すでに成長は速い。問題解決だけしていればいい」と。しかし、それでは組織が拡大する前に優れたマネージャーを育てる機会を逃します。こうした思考習慣を初期に養わなければ、会社の拡大スピードはマネジメントの能力を超え、結果的に倒産か経営陣の入れ替えに至ります。それよりも最初からマネジメントの意識を育てるべきです。部門が1人だけであってもです。OKRは社員を鍛え、より強いマネージャーを育て、初歩的なミスを回避させ、大企業並みの規律と秩序を小さな組織にも植え付けます。ZumeでOKRを導入したとき、もっとも大きな恩恵はプロセスそのものにありました。パフォーマンスを高める最も簡単な方法は、人々にビジネスについて深く・徹底的に・関連性をもって考えることを強制することです。
- OKR導入は、レポートを作ったり、イベントを開催したり、競争を演出したりするためのものではありません。視野を広げ、戦略的な思考を促すための仕組みです。
- OKRに無限の可能性があるのは高い適応力ゆえです。硬直した教義も唯一の正解もなく、状況に合わせて使い方を変えられます。組織はライフサイクルの段階ごとに異なるニーズを持ちます。ある組織にとってはシンプルでオープンな目標を掲げることが大きな飛躍で、別の組織にとっては四半期ごとの計画調整がゲームチェンジャーになります。誰もが自分の重点目標を見つけ、OKRでマネジメントできます。すべては自分次第です。
OKR設定の間違いと落とし穴
落とし穴1:コミット型とビジョン型の区別を誤る
- コミット型OKRをビジョン型として扱うと、失敗リスクが高まります。チームは重視しなくなり、優先順位を変えてまで達成しようとしません。
- 逆に、ビジョン型OKRをコミット型と見なすと、人工的な障害を生みます。チームは達成の道筋を描けず、優先順位が逆転し、本来コミット型OKRに集中すべき人がビジョン型OKRにリソースを奪われます。
落とし穴2:いつも通りのOKR設定
- チームが「現在のやり方を変えずに達成できそうなもの」を基準にOKRを決めてしまうケースです。本当にチームや顧客が求める結果ではないのです。
落とし穴3:臆病なビジョン型OKR
- ビジョン型OKRは現状から出発しますが、次の問いに答える必要があります。「余剰のリソースと少しの幸運があれば、私たちは何ができるか?」さらに良い問いは「資源が無限なら、数年後どんな世界で私(あるいは顧客)は暮らしているか?」です。OKRの雛形を作った時点では、達成方法がわからないことも多い。それがビジョン型OKRと呼ばれる理由です。しかし到達すべき姿を明確に言葉にできないなら、達成できる可能性はゼロです。
- リトマステスト:顧客に「何が欲しいか?」と尋ねたとき、企業のビジョン型目標は既に顧客ニーズを満たし、あるいは超えているか?
落とし穴4:背負いすぎ
- コミット型OKRはチームのリソースの大半を使いますが、全部ではありません。コミット型とビジョン型を合わせたリソース消費は、組織が持つ全リソースをわずかに上回るくらいが望ましい。それ以下なら、単なるコミット型目標にすぎません。
- チーム全員もしくは全リソースを使わなくてもOKRを達成できるなら、リソースを抱え込んでいるか、挑戦的な目標を立てていないか、その両方です。これは経営層にとって貴重なサインであり、リソースを再配分して生産性の高いチームに渡すべきです。
落とし穴5:価値の低い目標(誰も気にしないOKR)
- OKRは明確なビジネス価値を持つべきです。さもなければ、リソースを費やす理由がありません。
- 低価値目標とは、達成してスコア1.0を得ても誰も気づかないようなものです。典型例は「CPU使用率をさらに3%上げる」。ユーザーにも会社にも直接的な価値はありません。それに対し、「品質や遅延を変えずにピーク時のコア使用量を3%削減し、余剰コアを共有プールに戻す」という目標は明確な経済的価値を持ちます。
- リトマステスト:エンドユーザー利益や経済的価値がないまま1.0のスコアを得られるOKRなら、目に見える成果にフォーカスし直すべきです。同様に「Xをローンチする」という表現は成功基準が曖昧で弱いです。「分散ファイルシステムBorgの90%以上のセルでXを稼働させ、Yを2倍にする」といった形に改めましょう。
OKRの質を確かめるシンプルなテスト
- 5分で書けてしまうなら、おそらく質は高くありません。もっと考えましょう。
- 不整合があるなら、まだ成熟していません。
- キーリザルトがチーム内部の専門用語(例:「Foo4.1をリリース」)になっているなら不十分です。大切なのはリリースそのものではなく、その影響です。Foo4.1が重要な理由は何か?「Foo4.1のリリースで登録数を25%増やす」のように書き換えるべきです。
- 実データを使いましょう。すべてのキーリザルトが四半期末の一日で達成されるなら、実際には計画どおり進んでいない可能性があります。
- キーリザルトが測定可能であることを確認します。四半期末に客観的な指標で評価できる必要があります。「登録数を改善する」では弱すぎます。代わりに「5月1日までに日次登録数を25%増やす」と書きましょう。
- 指標を明確に定義します。「100万人のユーザー」とは、累計なのか、週次アクティブユーザーなのか?
- 重要な活動(あるいは目標達成に不可欠な要素)がOKRから漏れているなら、必ず追加しましょう。
- 大きな組織では、OKRを階層構造にする必要があります。チームは上位OKRを、サブチームは詳細OKRを策定します。「横断型(複数チームが関わる)OKR」が各サブチームのキーリザルトを支援するよう注意してください。
典型的なOKRサイクル
会社・チーム・個人のOKRを設定すると仮定すると、下記が良い参考になります。
OKRソフトウェア
- 一流のOKRプラットフォームは、モバイルアプリ、自動更新、分析レポート、リアルタイムアラート、Salesforce・JIRA・Zendeskなどのツールとの連携機能を備えています。
- 最先端の目標管理プラットフォームでは、OKRのスコアはシステムが自動生成します。データは客観的であり、人手による集計は不要です。
ジョン・ドーア『Measure What Matters(メジャー・ホワット・マターズ)』、中信出版集団。読書ノート。
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公開日: 2025年10月2日 · 更新日: 2025年10月26日